NHK杯将棋トーナメント 行方尚史 八段 VS 橋本崇載 八段 を観戦した感想。

つい先日(2015/3/8)に何かと話題になった、TV対局がありました。
その対局とはハッシーこと、橋本八段が登場するNHK杯です。

橋本八段と言えば、面白いパフォーマンスをする棋士で、
多くの人は「面白くて、そこそこ強い棋士」と思っていると思います。

しかし僕の中では橋本八段の評価は、全棋士の中でもトップクラスの棋士と評価しています。
その理由としては橋本八段を、プロ棋士になった時から見続けているからです。

今でこそ橋本八段はオチャラケていますが新四段の頃は、かなりストイックな棋士だったと記憶しています。
10代のプロ棋士として、色々なところで紹介されていましたね。

そしてその時期は今の渡辺二冠・阿久津八段なども現れだした頃で、当時の僕は(僕も20代前半だった頃)

「ついに羽生世代と戦える棋士が揃ってきたな!世代交代が見れるぞ!!!」

と、ワクワクしていた時期でした。


少し話が脱線しましたが、昔からファンである橋本八段が今期のNHK杯で好調とあって、
本局もとても楽しみにしており、リアルタイムで観戦していました。

それと今回珍しく対局の感想を書こうと思った理由がもう一つあります。
それは「先手の行方八段の指し方が、とても素晴らしかった」と言う理由です。

特に序盤は、そのまま定跡になるでしょう。
どの辺りが素晴らしかったのかは、この記事で僕なりに解説したいと思います。

そのため少し記事が、いつもより大きくなると思います・・・・
では書いていこうと思います。


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行方八段が先手になり、後手の橋本八段が序盤から工夫する展開に。
この先手居飛車に対しての4手目☖94歩は、かなり有力だと思っています。

この手の意味としては「先手に☗25歩を突いて欲しい」と言う意味です。

☗25歩を突かせると角交換~ダイレクト向かい飛車にした時に、
☖24歩~の逆襲が常に狙えます。

先手は☗25歩以外にも選択肢はありますが、その場合は後手に居飛車にされた時などに、
損になる可能性が高いです。

なので先手は☖94歩には、一番損にはならない☗25歩が必然的となります。

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☖22銀に対し先手は☗38銀と、細心の注意を払って指しました。
☗38銀には「おやっ?☗48銀じゃないのか」と思われる方もいるかもしれません。

この☗38銀には2つの意味があります。
1つは後手が居飛車に変化した時に、棒銀の含みを見せていると言う意味。

もう一つはあまり知られていませんが、「ダイレクト向かい飛車」を警戒していると言う意味です。

この☗38銀を指す局面ではまだ後手は、居飛車か振り飛車か判明していません。
そして橋本八段は、オールラウンダーでもあります。

ダイレクト向かい飛車を警戒している意味としては☗38銀の場合、
☗65角を打つ変化の時に、違いがハッキリ出る変化があります。

詳しく説明すると、☗38銀☖22飛☗65角☖74角☗43角成☖52金右☗同馬☖同金☗75金。(下図)

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もう定跡となったこの変化ですが現在では後手はここで、☖42飛が一番有力。
そのとき先手は☗74金☖同歩☗46歩!(下図)が有力と言う事が解って来ました。

後手はこの☗46歩は取れません。取ると☗55角がありますから。
取れないのであれば先手は☗47銀と、形良く駒組みをすることが出来ます。

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この時にもし☗48銀であれば、☖75歩という手があり☗同歩であれば、
☖54角が打てます。(下図)

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この☖54角は☖87角成と☖27金の両狙いで、先手は両方を防ぐことが出来ません。
☗38銀であれば27の地点に利いているので、この変化の心配はないと言う事です。

これが☗38銀の意味となります。

「お前はなんで、そんなに定跡に詳しいんじゃ!」と思う人もいるかもしれませんが、
実はこの変化、少し前に出た村田顕弘プロの本に載っています・・・

この本は超オススメ本なので、絶対買っておきましょう。



以上の変化はダイレクト向かい飛車を相手にする場合、知っていると知っていないとでは、
かなり違ってくると思うので、絶対記憶しておきましょう。


そういう事で後手はダイレクト向かい飛車にしても面白く無いので、
角交換四間飛車にしました。

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ここからの行方八段の序盤は完璧だったと思います。
まず☗96歩。

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ここで☗78玉などでは、☖95歩と指されてしまう可能性があるので、
それを阻止。

そして☖62玉には☗46歩。

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この☗46歩もここでしか成立しません。

もし☗78玉などでは☖72玉との交換になり、そこで☗46歩では☖44歩と指されて、
先手が作戦負けになりやすい。(☖45歩~飛車先交換をされてしまう)

このタイミングであれば☖44歩なら☗65角が打てるので、☖44歩は指せませんね。

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そして☖44歩には☗56銀がピッタリ間に合う。
後手の狙いを全て封じ、完璧な駒組みだと思いました。

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橋本八段もここくらいまでは当然予定通りで、☖35歩と序盤からポイントを稼ぎに来ます。
この☖35歩は橋本八段は得意にされており、かなり手強いと感じます。

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ここで☗86歩は感心しました。
すぐ見える手としては☗24歩だと思います。

しかしここで☗24歩は恐らく、居飛車がそんなに面白くない可能性が高い。
理由としてもし☗24歩であれば、☖同歩☗同飛☖23金☗28飛☖25歩(下図)が厳しそうです。

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ここからは一例として、☗77銀☖33金☗16歩☖22飛。(下図)

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これは完全に居飛車が、カウンターを喰らった感じですね。
記憶が正しければ橋本八段は、この手順で過去に快勝した将棋があったと思います。

行方八段の☗86歩~間合いを計り、銀冠に組む構想は巧妙な構想でした。

それで☗86歩に☖33桂を見て☗24歩。(下図)
これも細かい。

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☖33桂を跳ばせたことによって、先ほどの変化の☖33金がなくなっています。
数手進んで下図。

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その後は本局も、☖23金の変化のように居飛車が逆襲されたようになるのですが、
☖23金の変化とは違い先手も玉頭に手を掛けれており、これであれば先手も戦えます。

行方八段の指し回しには、感心させられてばかりでした。
数手進んで下図。

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後手の狙い筋を全て見破り、先手は無事に銀冠に組めました。
2筋は辛い形ですが、それ以上に玉形が大差です。

まだまだ互角だとは思いますが、先手が勝ち易い局面だと思います。

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橋本八段としては仕掛けられなかったので、少し面白くない展開だと思いますが、
自分からは崩れない粘り強い指し方で、ジッと我慢する指し回しは参考になります。

これぞ重量級と言う感じです。

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橋本八段の粘り強い指し方に、行方八段も手を焼いている感じでした。
☗98香は苦心の一手に見えましたね。

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僕が一番印象強く残った手は、この☗67銀です。

ハッキリ言って深い意味は解らないのですが、
「こう言う手損をする手は、自分には全くない発想だな・・・」と感じました。

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観戦していて先手が良くなったかな?と感じた手は☗56金と、
遊んでいる金が味よく活用できた局面です。

先手の金銀の連結が素晴らしく、見た目的には相当負けにくいと感じる局面でしょう。
形が良くなる手に悪手は無いですから。

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数手進んで上図に。
この☗55金とガツンとぶつけて、完全に先手ペースになったと感じました。

後手は飛車が遊んでいるのが辛そうです。

ただ後手は受けが強い橋本八段なので、「まだまだ先は長そうだな・・・」と思い見ていました。
しかし・・・

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難解な終盤戦が続いていましたが、橋本八段がまさかの二歩で反則負けに。
一瞬の出来事でしたね。

この橋本八段の二歩については色々なところで話題になっていますが、
これは仕方がないと思います。

実は僕もTVで見ていて、この局面の第一感は☖63歩でした。
僕も二歩に全く気づかず、「☖63歩にはどうするんだ?まだまだ大変だぞ・・・」
と考えていました。

たぶん他に見ている人も☖63歩は第一感の手として、
候補手に考えていた人も多いのではないでしょうか。

橋本八段も完全に、ウッカリしたんだと思います。

勝った行方八段は順位戦でも好調で、充実を感じさせる一局でした。
この将棋は参考になる手が多く、とても勉強になったと感じました。

この対局の詳細な解説は、NHK将棋講座に載るので、
それも今から楽しみですね。

ちょっと長くなりましたが以上が、この一局を見た僕の感想です。
来週からは「将棋電王戦FINAL」が始まるので、それも去年の様に観戦した感想を書いて行く予定です。



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コメント

私は6八歩成と成り捨ててからの6三歩を読んでいました。
6三歩を指した途端、木村八段と「あっ…」と声がシンクロしてしまいましたね。

同日の棋王戦解説生放送でも深浦九段がしばらく二歩に気づかなかった場面がありとても印象的でした。

2015/03/11 (Wed) 00:06 | #- | URL | 編集
No title

☖63歩はやはり、指してみたい一手ですよね。
成り捨ててから指していれば、まだまだ熱戦が続いてたと思います。

2015/03/11 (Wed) 19:38 | 将棋猫 #- | URL | 編集

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